結論:載せる前に決めておくことは4つです

お客様の声を自社のホームページに載せるとき、先に決めておくことは4つです。

  1. 載せる前に、本人の許可を取る
  2. もらった言葉を書き換えない
  3. 良い声だけを選んで並べない
  4. お礼を渡して書いてもらった声は、そうと分かるように示す

3と4は、景品表示法に関わります。広告なのに広告であることを隠す表示は、ステルスマーケティングと呼ばれています。消費者庁のページによると、2023年10月1日から、これが景品表示法の規制の対象になりました。対象になるのは、商品やサービスを供給する事業者の側です。頼まれて書いた人の側ではありません。工事会社でいえば、載せる私たちの側の話です。

先に断っておきます。この記事は、消費者庁の公開資料を私が読んで整理したものです。弁護士の助言の代わりにはなりません。法律の読み方も断定しません。迷ったら、消費者庁の資料や専門家に確かめてください。

Googleマップの口コミの頼み方は、Googleビジネスプロフィール、職人が最初にやる設定5つに書きました。この記事は、自社のホームページに載せる場合だけを扱います。

私は屋根の現場に20年以上入っています。屋根工事は、仕上がりを先に見てから買うことができません。だから、先に頼んだ人の言葉が判断の手がかりになります。手がかりにされるものだからこそ、出し方に決まりがあります。

許可は、載せるものごとに取ります

「載せていいですか」の一言では足りないと、私は考えています。何を載せるのかが、相手に伝わっていないからです。私なら、次の5つを分けて聞きます。

  • 載せる文章そのもの
  • 名前の出し方(実名、イニシャル、「盛岡市・60代」のような書き方、出さない、から選んでもらう)
  • 顔が写った写真を使うかどうか
  • 家の外観が写った写真を使うかどうか
  • 載せる場所(ホームページだけか、チラシやSNSにも使うか)

聞いた結果は、紙かメッセージで残します。口頭の「いいよ」は、あとで双方の記憶が食い違ったときに確かめようがありません。私なら、引き渡しのときにチェック欄つきの紙を1枚渡します。日付と署名をもらい、控えを相手にも渡します。

屋根屋として気をつけたいのは、家の外観です。屋根の写真は、家の形や周りの景色から場所が分かることがあります。表札、車のナンバー、隣の家の窓も写り込みます。許可をもらった写真でも、私なら屋根面に寄った写真を選びます。隣の家は、許可をくれた本人ではないからです。

もう2つ決めておきます。断られたら載せないこと。そして、あとから「消してほしい」と言われたら消すこと。消す連絡先は、許可をもらう紙に書いておきます。

書き換えない。良い声だけを選ばない

直してよいのは、誤字と、個人が分かる部分の伏せ字まで。私はそこに線を引きます。方言を標準語にする。短くまとめる。どれも親切のつもりで手が動きます。ただ、手を入れた時点で、その文章は本人の言葉ではなくなります。

長い文章の一部だけを使うときは、とくに注意がいります。消費者庁のQ&Aに、アンケートの回答を「お客様の声」として自社のウェブサイトに載せる場面が取り上げられています。良い点と悪い点の両方を挙げた回答から、良い点の部分だけを引用する場合です。これは「事業者の表示」に当たると考えられる、とされています。

「事業者の表示」は、この規制で使われている言葉です。かみ砕くと、お客様の自主的な感想ではなく、会社が出した広告として扱われる、という意味だと私は読んでいます。

例を挙げます。これは説明のために私が作った文章で、実在の声ではありません。

「工期は予定より2日延びました。ただ、毎日写真で説明してくれたので、不安はありませんでした」

後半だけを載せると、工期が延びた事実が消えます。読んだ人が受け取る印象は、元の文章と別のものになります。私なら全文を載せます。

同じQ&Aは、選び方にも触れています。確認できた範囲では、次の2つです。

  • 無作為に選んだ回答を引用して載せる場合は、「事業者の表示」に当たらないと考えられる
  • 好意的な評価をしているものだけを選んで引用する場合は、「事業者の表示」に当たると考えられる

つまり、問われているのは声の中身だけではありません。選び方もです。

そこで私なら、選ばなくて済む仕組みにします。許可をもらえた声は、届いた順に全部載せます。数が増えたら、新しい順に並べます。厳しい声も同じ場所に載せます。そのうえで、会社としてどう対応したかを、声のすぐ下に書きます。

これも例です。実在の声ではありません。

「見積もりの返事が来るまで1週間かかり、他社に頼もうか迷いました」

この声の下に、会社がその後どう改めたかが書いてあれば、読む人は会社の動き方まで分かります。実際に改めていないことは書けません。

褒め言葉だけが並んだページより、厳しい声に返事がついているページのほうを、私は信用します。会社が自分で書いた文章をお客様の声として出さないことは、決まり以前の話です。

お礼を渡したら、そうと分かるように示します

割引や謝礼を渡して書いてもらう場合です。消費者庁のQ&Aには、口コミの投稿を条件にサービスを割引する例が出ています。整理すると次のとおりです。

  • 投稿の内容について指示をせず、渡すものも割引程度にとどまる場合は、通常、「事業者の表示」に当たらないと考えられる
  • 「星5」を付けることを条件にした場合は、「事業者の表示」に当たると考えられる
  • 品質や価格などを推奨するコメントを条件にした場合も、同様とされている

1つ目は、渡すものが割引程度、という条件がついた例です。内容を指示していなければ当たらない、と広げては読めないと私は受け取りました。同じQ&Aには、個別に依頼を受けて報酬を受け取る投稿は、「事業者の表示」に当たる可能性が高い、とする問いがあります。はっきり頼んだり指示したりしていない場合の話も書かれています。対価の内容などから、事業者が関わっていると判断されることがある、という内容です。謝礼を渡して頼むなら、当たる側に入るものとして扱うほうが安全だと私は考えています。

なお、Googleマップの口コミは別の決まりです。Googleのポリシーは、割引などの見返りと引き換えに口コミを頼むことを禁じています。Googleビジネスプロフィール、職人が最初にやる設定5つに書きました。

当たる場合は、広告であることが見る人に分かるよう、はっきり示す必要があるとされています。運用基準が挙げている言葉は「広告」「宣伝」「プロモーション」「PR」です。「A社から商品の提供を受けて投稿している」のように、文章で示す方法も認められています。文字の大きさや色を含めて、見る人にとって明瞭であることが求められています。

工事会社に置き換えます。モニター価格で工事をして、感想を書いてもらう場合です。私なら2つ守ります。

1つ目。書く内容に注文をつけません。「良かった点を書いてください」も注文です。

2つ目。条件を、声のすぐ隣に書きます。たとえば「モニター価格で施工し、感想の掲載をお願いしました」。表示が要るかどうかの線を、自分で読み切ろうとはしません。私なら書きます。読む人が知りたい情報だからです。

もう1つ、Q&Aにある場面を挙げます。会社が依頼したインフルエンサーの投稿を抜き出して、「お客様の声」として自社サイトに載せる場面です。これは適当ではないとされています。「お客様の声」と書かれていれば、自主的な感想だと受け取られるからです。

違反と判断された場合、事業者に措置命令が出されることがあるとされています。

誇大にならない見せ方

最後は見せ方です。景品表示法は、実際のものよりも著しく優良であると示す表示を禁じています。優良誤認表示と呼ばれるものです。消費者庁のページには、措置命令などの対象になると書かれています。

お客様が書いた言葉でも、載せると決めたのは会社です。私は、自分の会社が書いた文章と同じ重さで点検します。見るのは3点です。

  • 見出しで盛らない。声の上に「満足度100%」「地域で一番」のような見出しを付けない。数えていない数字と、比べていない順位は書けません
  • 数字には母数と期間を添える。星の平均を出すなら、何件の平均か、いつからいつまでの分かを書く
  • 将来の約束に読める声には、範囲を添える。たとえば「もう雨漏りの心配はありません」という声です(これも例です)。どの工事をしたのか、保証の範囲はどこまでかを隣に書く

小さな字で「個人の感想です」と添えれば何を載せてもよい、とは私は考えていません。添え書きに頼らず、声そのものと、その周りに置く情報で誤解を防ぐほうをおすすめします。

それぞれの声には、工事の種類、地域(市の名前まで)、工事をした年を添えます。いつの、どんな工事の話なのかが分かれば、読む人は自分の家に引き寄せて読めます。

許可を取る。書き換えない。選ばない。条件を隠さない。4つとも、やることは「もらった言葉を、もらった形のまま出す」に尽きます。

出典

確認日:2026年10月5日

  1. 令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。
  2. ステルスマーケティングに関するQ&A
  3. 優良誤認とは