施主さんが見ているのは、色より先に「誰がどう塗るか」です
先に結論を書きます。塗装店のホームページに要るのは、きれいな仕上がりの写真だけではありません。誰が塗るのか。どういう手順で塗るのか。工事のあいだ、家の暮らしがどうなるのか。この3つに答える情報です。
私は塗装の職人ではありません。屋根職人です。屋根工事歴は20年以上、施工は2,000棟以上です。屋根屋も塗装店も、施主さんから選ばれる側、見られる側の仕事です。この記事は、隣の業種の職人という立場から書きます。塗装の技術を語る記事ではありません。
屋根と塗装は似ていると私は考えています。どちらも足場を組む工事です。どちらも、終わると中身が外から見えなくなります。屋根は下地が隠れます。塗装は、下塗りが上塗りの下に隠れます。施主さんは、見えなくなる部分を自分の目で確かめられません。だから頼む前に「この店は見えないところをどう扱うのか」を知りたくなる。私はそう考えています。ホームページは、その答えを先に置いておく場所です。
載せるべき8つの情報
塗装店のサイトに置きたい情報を、8つに絞りました。それぞれ、施主さんのどの疑問に答えるのかを添えます。
1. 誰が塗るのか
職人の顔と名前です。自社の職人が塗るのか、協力会社が入るのかも書きます。塗装技能士などの資格や建設業許可は、持っているものだけを正式な名前で載せます。家に毎日来る人が誰なのかは、工法より手前の疑問です。
2. 塗る手順
洗う。下地を直す。下塗りをする。上塗りをする。自分の店の手順を、順番どおりに書きます。
3. 使う塗料の名前
メーカー名と製品名です。
4. 見積もりの出し方
塗る面積をどう測るのか。見積書にどんな項目が並ぶのか。金額そのものを載せるかどうかは店の判断です。出し方だけでも書いておくと、施主さんは他社の見積書と見比べる軸を持てます。
5. 施工事例
仕上がりだけでなく、途中の写真を入れます。
6. 工事中の暮らしへの影響
日数、洗濯物、窓、車、におい、近所への挨拶です。
7. 保証と、工事後の連絡先
何を、どこまで、どんな条件で見るのか。書面で渡すのかどうか。約束できる範囲だけを書きます。
8. 会社の基本情報と対応エリア
所在地、代表者名、電話番号、行ける範囲です。実在する店かどうかを確かめる情報なので、どのページからもたどれる場所に置きます。
塗装だからこそ書いておきたい3つ
2番、3番、5番は、塗装という仕事の性質から来る項目です。理由をもう少し書きます。
まず手順です。塗装は、乾くと層が重なって1枚に見えます。下地をどこまで直したのか。下塗りを入れたのか。仕上がった壁からは読み取れません。だから手順を文章で先に見せておきます。専門用語を並べる必要はありません。「なぜその作業をするのか」を1行ずつ添えるほうが伝わります。
次に塗料の名前です。「シリコン」「フッ素」といった種類の呼び名だけでは、どの製品かまでは特定できません。製品名が書いてあれば、施主さんはメーカーの資料を自分で調べられます。調べられる状態にしておくことが、そのまま信用になると私は考えています。何年もつかを自分の言葉で言い切るより、メーカーが公表している資料を示すほうが安全です。
最後に途中の写真です。塗りたての壁は、それだけできれいに見えます。仕上がりの写真だけでは、店ごとの違いが伝わりにくい。洗っているところ。ひび割れを埋めたところ。下塗りを終えたところ。この3枚があると、手順のページに書いたことを実際にやっている、という裏づけになります。
私なら、工事中の暮らしのページから作ります
私ならこう見ます。8つのうち、最初に手をかけるのは6番です。
施主さんにとって、工法の話より先に気になるのは暮らしの話だと私は考えています。何日かかるのか。車はどこに置けばいいのか。ご近所には誰が挨拶に行くのか。
塗装は、屋根工事より家の中の暮らしに近い工事だと私は見ています。足場とシートで家が囲われます。窓を覆う日、洗濯物を外に干せない日、塗料のにおいがする日が出ることがあります。
これを工事が始まってから知るのと、頼む前に読んでいるのとでは、受け取り方が変わります。書く内容は、自分の店の段取りそのものです。
- 着工から足場を外すまでのおおよその日数と、天気で延びたときの連絡方法
- 窓を開けられない日、洗濯物を外に干せない日はいつか
- 車の移動やカバーが要るかどうか
- 近所への挨拶を、誰が、いつするか
- 職人が来る時間と、帰る時間
不都合に見える話を先に書いてある店は、話が通じる相手に見える。私はそう考えています。
もうひとつ。このページはスマホで読まれる前提で作ります。家族に見せながら相談する場面を想定して、文字の大きさと電話ボタンの位置を実機で確かめておきます。
載せないほうがいいものと、作る順番
載せないほうがいいものも3つあります。
ひとつめは、根拠を示せない言い切りです。「地域でいちばん安い」のような表現は、根拠を聞かれたときに答えられないなら書かないほうが無難です。
ふたつめは、不安をあおる文面です。「今すぐ塗らないと家がだめになる」という書き方は、訪問販売の口上と同じに見えます。傷みの見分け方を淡々と書くほうが、読んだ人は落ち着いて判断できます。
みっつめは、守れるか分からない保証です。年数を大きく書くより、対象と条件をはっきり書きます。
作る順番です。8つを一度にそろえる必要はありません。私なら、まず8番、1番、6番を置きます。実在する店だと分かること。誰が来るのか分かること。暮らしがどうなるのか分かること。ここまでで、問い合わせる前の疑問の入口は片づきます。次に2番、3番、4番。5番は工事が終わるたびに1件ずつ足します。7番は、渡す書面と文面をそろえてから載せます。
これを載せれば問い合わせが来る、とは言えません。ただ、施主さんが頼む前に抱える疑問に、先に答えておくことはできます。塗装は、終わると見えなくなる仕事です。見えるうちに、言葉と写真で残しておく。ホームページはそのための場所だと考えています。

