結論:優劣ではなく、役割が違います

一括見積サイトと自社ホームページは、どちらが良い悪いで比べるものではないと私は考えています。役割が違うからです。

違いは2つに絞れます。

  • 何が手元に残るか
  • 誰と比べられるか

一括見積サイトは、工事を考えている人が集まる場所を借りる仕組みです。この記事では、紹介サービスやマッチングサービスと呼ばれるものも含めて、この名前で呼びます。自社ホームページは、自分の場所を持つ仕組みです。

借りた場所は、早く使えます。そのかわり、その場所の決まりに従います。自分の場所は、育つまでに時間がかかります。そのかわり、載せたものが自分の手元に積み上がります。

私は屋根職人です。屋根工事歴は20年以上です。自社の瀧澤屋根工業では、LP、ブログ50本、動画、SEOを回して集客してきました。自分の場所は、育てるのに手間がかかります。その前提で、2つの入口を順に整理します。特定のサービスの話はしません。仕組みの型の話として読んでください。

一括見積サイトが引き受けてくれること

一括見積サイトが引き受けてくれるのは、人を集める仕事です。

工事を考えている人を集めるには、広告や記事、サイトの運営が要ります。その部分を、サービスの側が担います。登録した会社は、集まった人の中から紹介を受けます。

向いている場面は、たとえば次の3つです。

  • 開業したばかりで、自社の施工実績をまだ見せられない
  • 職人の手が空く時期が先に見えていて、そこを埋めたい
  • 新しい地域や新しい工事に広げる前に、問い合わせの手応えを確かめたい

どれも「自分の場所が育つのを待てない」場面です。ここで借りた場所を使うのは、理にかなった選び方だと私は考えています。

費用のかかり方は、サービスによって型が分かれます。紹介のたびに費用がかかる形のサービスもあります。契約に至ったときに費用がかかる形もあります。月々の掲載料がかかる形もあります。どの型かによって、1件の仕事にかかる集客の費用は変わります。

登録の前に、私なら次の4点を規約で確かめます。

  1. 費用が発生するのはどの時点か
  2. 受けられない紹介を断れるか。断った場合の扱いはどうなるか
  3. その工事の写真を、自社の実績として別の場所に載せてよいか
  4. 退会の条件と、退会後に掲載内容がどうなるか

金額より先に、3番と4番を読むことをおすすめします。次に書く「何が残るか」に関わるからです。

自社ホームページで手元に残るもの

自社ホームページは、載せたものが自分の手元に残ります。

具体的には次のものです。

  • 施工事例と、その写真
  • 工事の考え方を書いた文章
  • 対応エリアと工事の種類を書いたページ
  • 社名で調べた人が行き着く先

事例を1件載せれば、1件分が残ります。翌年も同じページがそこにあります。積み上げ式です。

一括見積サイトの側にも、会社の紹介ページや評価が残る場合があります。ただ、それはサービスの中に置かれたものです。退会したあとに持ち出せるかどうかは、規約によります。ここが、借りた場所と自分の場所の違いです。

自社ホームページの弱いところも書いておきます。

  • 作っただけで人が来るものではありません。事例や記事を足していく手間が続きます
  • 検索で見つけてもらえるまでに時間がかかります。どれくらいかかるかは地域と工事の種類で変わり、約束できるものではありません
  • 育つまでの間は、そこからの問い合わせを当てにした段取りが組めません

「ホームページがあれば、紹介サービスは要らない」とは、私は言いません。育つまでの間をどう埋めるかは、別に考える必要があります。

誰と比べられるかが違う

2つ目の違いは、比べられ方です。

一括見積サイトは、名前のとおり、複数の会社から見積もりを取るための仕組みです。お客さんは、最初から数社を並べる前提で申し込みます。初めて名前を見る会社が並べば、見比べやすいものから比べることになります。金額、日程、返事の早さです。

これは欠点ではありません。お客さんにとっては、比べやすいことが価値です。会社の側から見れば、その土俵に合う工事と合わない工事がある、という話です。

  • 仕様が決まっていて、金額で比べやすい工事は、この土俵に合います
  • 現地を見ないと中身が決まらない工事は、数字だけが並ぶと説明が届きにくくなります

自社ホームページから来る人は、問い合わせる前にページを読めます。事例を見て、考え方を読んで、そのうえで連絡するかを決められます。比べる相手がいなくなるわけではありません。他社のサイトと見比べることは、もちろんできます。ただ、比べる材料が金額だけではなくなります。

私ならこう見ます。屋根の工事は、同じ「葺き替え」でも、下地(屋根材の下にある板や防水の層)をどこまで直すかで中身が変わります。金額だけが並ぶと、その違いは伝わりません。だから私は、下地の写真や工事の手順を、先に読める場所に置いておきたいと考えます。数社のうちの一社として呼ばれた場合でも、読める場所があれば、説明の出発点が変わります。

併用するなら、役割を分けて数字を付ける

2つは、片方だけを選ぶものではありません。役割を分ければ併用できます。私なら次の3つをやります。

1. 紹介で会うお客さんにも、自社ホームページを見られる前提で整える

紹介を受けたお客さんが、あとから社名で調べ直すことを想定しておきます。そのとき行き着く先に、事例と会社の情報がそろっているか。借りた場所で出会い、自分の場所で確かめてもらう。この順番で考えます。

2. 終わった工事を、自社の側に積む

入口がどちらでも、工事が終われば事例になります。お施主さんの了承を取り、サービスの規約で認められている範囲で、写真と工事の内容を自社ホームページに載せます。借りた場所で得た仕事が、自分の場所の材料になります。

3. 入口ごとに数字を付ける

問い合わせを受けたら、どこから来たかを1行で記録します。付ける数字は4つです。

  • 問い合わせの件数
  • 契約になった件数
  • その入口にかかった費用
  • 契約になった工事の粗利(売上から材料費と外注費を引いた残り)

記録がたまれば、入口ごとに「1件の契約にいくらかかったか」が出ます。続けるか、減らすか、やめるかは、その数字で決めます。印象では決めません。

配分は、時期によって変えてよいものです。自社ホームページが育つ前は、借りた場所の比重が大きくなります。自社の側に事例がたまり、そこからの問い合わせが数字で見えてきたら、比重を見直します。いつ切り替わるかは会社ごとに違います。目安の月数を私から言うことはできません。

どちらの入口にも役割があります。確かめるのは、その入口を使い終えたときに、手元に何が残っているかです。